国交省 視野障害対策に指針

国交省 視野障害対策に指針

国土交通省は、「自動車運送事業者における視野障害対策マニュアル」を策定した。視野障害に関する運転リスクについて周知し、眼科健診の受診や治療の継続を促進するため、視野障害対策を進めるにあたって知っておくべき内容や取り組む際の手順などを具体的に示した。

運転リスクの周知、眼科健診の受診促進


事業用自動車の運転者が疾病により運転を継続できなくなる事案は依然として多く発生している。その中で高度の視野障害を有する運転者が、自身の疾患に気付かずに運転を継続している場合、信号や標識を見落とすなど重大事故を引き起こす可能性が高まる。
国交省では、産学官の幅広い関係者からの意見を踏まえ、運転者の視野障害が原因となる事故を防ぐために自動車運送事業者が知っておくべき内容や取り組む際の手順などを示したマニュアル(40頁)と、普及を図るための概要版を作成した。
日本人の視野障害の原因疾患調査(2018年、18才以上の視覚障害者手帳取得者1万2505人対象)では、最も多いのが緑内障(28・6%)、次いで網膜色素変性症14・0%)で、いずれも視野が狭くなるなど視野障害をきたす疾患であり全体の4割以上を占める。
また、緑内障の有病率は40歳以上の日本人で約5%と言われ、初期・中期には自覚症状がないことが特徴である。
早期に発見し、治療を継続することで進行を抑制できる疾患もあり、運転寿命の延伸につながるとしている。

●取り組む手順を具体的に示す

マニュアルは第1章に知識編を、第2章に実践編として①運転者への理解促進、②眼科健診の受診と対応、③視野障害に関する注意すべき症状の把握と3段階において実施事項を示した。
①は運転者に対して、視野障害に関する理解を促すため、社内教育や施策(簡易スクリーニング検査手法の導入・実施等)を実施する。
②は定期健康診断において、視力検査のほか、眼底検査・眼圧検査などの追加検査(眼科健診)を勧める。健診で異常あり、または異常の疑いがある場合は、眼科精密検査の受診を指導する。
③は「疾患を見逃さないために注意すべき症状」について運転者に周知する。また、日頃から点呼等で症状の有無を確認し、症状が現れた場合は、眼科精密検査の受診を指導する。
引き続き実践編として第3章に眼科医による精密検査(視力検査、眼底検査、眼圧検査、視野検査等)や治療の概要をまとめ、第4章に事業者実施項目として「運転者の運転業務に関する意見を眼科医から聴取」「個別の状況判断および産業医との相談の上、就業上の措置(運転指導や経過観察等)を講じる」を示した。

●運転における視野障害の兆候

マニュアルに記載された「運転における視野障害の兆候」(参考)によると、横断歩道横断中の歩行者死亡事故(第1・第2当事者)における車両等の法令違反の割合(2021年)では、「横断歩行者妨害等」が多くを占める中で、横断歩行者妨害に至った背景に視野障害が運転に影響していた可能性を排除できないケースも考えられる。特に現場の状況から明らかな原因が分からない交通事故が発生した場合は、視野障害を疑う必要があるとしている。
視野障害に関して運転中の兆候として、「左右からの飛び出しへの反応が遅れる」、「信号・標識を見落とす」、「夜間や雨天時に、以前より見えにくくなったと感じる」、「運転視野が以前より狭くなったと感じる」、「見ようとしているところ(視野の中心部分)が見えにくい」、「視界がかすんだり、黒い点のようなものが見える」などの兆候(自覚症状)をあげている。

●モデル事業、3年間で追跡調査実施※2段別記事

国交省では視野障害対策として、昨年12月に有識者を含むワーキンググループ(WG)を設置し、2021年度事業としてマニュアルの策定と、眼科健診普及に向けたモデル事業を実施した。
モデル事業については、眼科健診に積極的に取り組みたいと考えている事業者の中からモニター事業者を選定。モニター事業者の運転者が眼科健診を受診し、視野障害の発症や治療の有無、勤務状況、事故発生の有無などについて調査し、眼科健診を活用した健康確保の取り組みの手法を検討し、事業者への周知・普及を図るもの。
3年にわたって追跡調査し、21年度は700人の受診、22、23年度は各1000人を予定する。2・3年目の追跡調査では眼科健診受診運転者に係るその後の視野障害の発症や治療の有無、勤務状況、事故発生の有無などについて調査する。
このモデル事業で得られた情報等もマニュアルに反映させ順次改訂も行う考えだ。

提供元:日本流通新聞×foredge
By:物流たまてばこ

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