行政処分の高度化と累積点数制度の罠
貨物自動車運送事業を取り巻く規制環境は、2024年の労働基準監督の強化を経て、2026年現在は「法令遵守が事業継続の最低条件」となるフェーズに突入している。運送事業者が最も直面したくないシナリオは、法令違反に起因する行政処分、とりわけ「事業停止(営業停止)」である。行政処分の基準は近年、悪質な法令違反が常態化している事業者に対して厳格化の一途を辿っており、国土交通省は飲酒運転や点呼未実施、過労運転の防止違反を重点的に監視している。
行政処分の体系は、違反行為ごとに設定された「違反点数」を営業所単位で積み上げる累積点数制度に基づいている。この点数は原則として3年間累積され、一定の基準を超えると車両停止や事業停止、最悪の場合は許可の取消しへと繋がる。2026年現在、特に警戒すべきは、1回の行政処分で課される処分量定の大幅な引き上げである。例えば、点呼の未実施が20件発覚した場合、以前の基準では初違反で10日車(1台の車両を10日間停止)であったが、最新の基準では20日車と2倍に強化されている。さらに、未実施が50件に及ぶ場合は初違反で50日車、再違反で100日車と、量定は2.5倍にまで跳ね上がっている。
飲酒運転に関しては、さらなる厳罰化が断行されている。酒酔い・酒気帯び運行が発生した際、事業者が適切な指導を行っていなかった、あるいは点呼を実施していなかったことが判明した場合、初違反であっても100日車の車両停止処分が下される。再違反の場合は200日車となる。これは、事業者の管理能力不足が重大な事故に直結するという認識が反映された結果である。
表1:累積点数と事業停止・許可取消の基準
| 累積違反点数 | 車両停止処分の日車数 | 処分の内容 |
| 30点以下 | 270日車以上 | 事業停止処分 |
|---|---|---|
| 31点以上 | 180日車以上 | 事業停止処分 |
| 51点以上 | ー | 営業所単位での事業停止処分(一発) |
| 過去2年間に3回の事業停止 | 上記条件に該当 | 運送業許可の取消処分 |
表1に示す通り、累積点数が31点を超えている事業所において、1回の監査で180日車以上の処分が下された場合、即座に事業停止処分の対象となる。さらに、累積点数が51点に達すると、当該営業所だけでなく、同一管轄区域内の全ての営業所が事業停止の対象となる極めて厳しい措置が取られる。
実際の監査現場では、日報と点呼簿の不整合や、デジタコデータと運行指示書の矛盾が厳しくチェックされる。2025年に公表された行政処分の事例では、複数の法令違反(乗務時間告示違反、点呼実施義務違反、指導監督違反など)が重なり、160日車の車両停止処分を受けた事業者が確認されている。このような処分は、国土交通省の「ネガティブ情報等公表システム」に掲載され、荷主企業からの取引停止を招く社会的制裁としての側面も持っている。
専門家に確認を要する事項として、自社の現時点での累積点数の正確な把握と、過去の違反履歴の消滅(リセット)時期の判断が挙げられる。最後の違反から2年間無事故・無違反で経過すれば点数はリセットされるが、その間に軽微な違反が重なると、事業停止のデッドラインに近づくことになる。
【結論】
運送会社は、点呼および日報管理を「形式的な事務」から「リスク管理の根幹」へと意識改革し、1回の監査で事業停止に追い込まれないよう、日々の帳票管理の精度を極限まで高める必要がある。
【根拠】
国土交通省による行政処分基準の改正通達(2025年施行)および貨物自動車運送事業法に基づく違反点数制度の規定。
【注意点・例外】
予期し得ない災害や事故など、事業者側の努力だけでは防げない要因による遅延などは一部考慮される可能性があるが、基本的には帳票の不備そのものが処分の対象となる。
【出典】国土交通省 行政処分基準強化(2025年1月施行) PLEX JOB 運送業の行政処分と累積点数 PLEX JOB 運送業許可の取消基準
2024年改正改善基準告示の深層と労務管理の再定義
2024年4月に施行された「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」は、2026年現在の運送業界における労務管理の「憲法」となっている。この告示は、ドライバーの健康確保と事故防止を目的に、拘束時間の短縮と休息期間の延長を定めたものであるが、現場の運用と法令の乖離が監査における最大の指摘ポイントとなっている。
拘束時間については、1日の原則が13時間以内、最大でも15時間までとされ、14時間を超える回数は週2回までとする努力義務が課されている。2024年以前の「最大16時間」という基準はもはや通用しない。長距離輸送における例外措置として、休息期間のいずれかが住所地以外(泊まり)である場合に限り、週2回まで拘束時間を16時間まで延長可能だが、その翌日は継続12時間以上の休息を与えなければならないといった厳格な「縛り」が存在する。
休息期間(勤務間インターバル)は、勤務終了後に「継続11時間以上」与えることが基本かつ努力義務であり、いかなる場合も「継続9時間」を下回ってはならない。
表2:2024年改正改善基準告示の主要基準一覧(2026年運用状況)
| 項目 | 基準値 | 備考 |
| 1日の拘束時間 | 13時間(最大15時間) | 14時間超は週2回までが目安 |
|---|---|---|
| 1か月の拘束時間 | 284時間(最大310時間) | 労使協定締結時、年6か月まで |
| 1年の拘束時間 | 3,300時間(最大3,400時間) | 労使協定締結時 |
| 1日の休息期間 | 継続11時間以上(努力義務) | 継続9時間を下回ることは禁止 |
| 連続運転時間 | 4時間を超えないこと | 1回10分以上、合計30分以上の休憩 |
特に注意が必要なのは、2026年以降の労働基準監督署による臨検の傾向である。単に「13時間」や「284時間」といった数字を守るだけでなく、休憩時間の質も問われるようになっている。例えば、荷待ち時間中に車両を数メートルずつ移動させる「コマ送り」状態は、改善基準告示上の「休憩」とはみなされず、運転時間または拘束時間としてカウントされるリスクがある。連続運転時間の定義において、10分未満の運転中断は休憩に含まれず、それが3回以上連続した場合は連続運転違反と判定される。
分割休息の特例についても、2024年の改正で内容が変更された。継続9時間の休息が困難な場合に限り、休息期間を分割して与えることができるが、1回あたり「継続3時間以上」が必要であり、2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上の休息が必要となる。ただし、3分割が連続しないように努める必要があり、一定期間(1か月程度)における全勤務回数の2分の1が限度とされる。
さらに、2026年4月からは「軽貨物自動車(黒ナンバー)」を用いた事業に対しても、安全管理者の選任や記録管理を義務化する法改正が順次施行されている。これは宅配需要の急増に伴う軽貨物車両の事故増加を背景としており、従来は規制が緩かった分野においても、一般貨物並みの労務管理が求められるようになっている。
専門家に確認を要する事項として、2026年に議論されている「働きたい改革(労働時間の規制緩和)」の動向が挙げられる。ドライバーの中には、より多く働いて稼ぎたいというニーズがある一方で、過労死防止の観点からの規制維持との間で揺れており、具体的な緩和の是非や基準については今後の行政通達を注視する必要がある。
【結論】
管理者は「1日の最大拘束時間は15時間、最低休息は9時間」というデッドラインを遵守するだけでなく、週2回までの特例運用状況をリアルタイムで把握できるデジタコ等のITツールを導入し、現場への具体的な配車指示に落とし込む必要がある。
【根拠】
厚生労働省および国土交通省による「トラック運転者の改善基準告示(令和6年4月施行)」に基づく各基準。
【注意点・例外】
予期し得ない事象(災害、道路閉鎖、故障、救護等)に対応した時間は、拘束時間や運転時間から除外できる特例があるが、その事実を証明する記録が必要である。
【出典】行政書士法人シフトアップ 改善基準告示改正のポイント B2Bロジ 2024年問題と休息期間 近畿運輸局 改正改善基準告示の概要
2026年改正貨物自動車運送事業法と実運送管理の義務化
2026年4月1日に施行される「貨物自動車運送事業法」の改正は、日本の物流業界の構造的な歪みを是正するための抜本的な改革である。今回の改正の最大の目玉は、多重下請け構造の透明化と、契約内容の書面化を全事業者に義務付けることにある。
これまで、実際に荷物を運ぶ最終的な実運送事業者の情報を記録する「実運送体制管理簿」の作成義務は、主に一般貨物自動車運送事業者に課されていた。しかし、2026年4月からは、トラックを持たない「貨物利用運送事業者(フォワーダー)」に対しても、この管理簿の作成・備え付け義務が拡大される。
改正貨物自動車運送事業法(2026年4月施行)の主要変更点
- 実運送体制管理簿の作成義務拡大:
利用運送事業者が元請となる場合も、最終的な実運送者名、車両番号等の記録・保存が必要。 - 多重下請けの是正(努力義務):
再委託の回数を2回以内(実運送を含めて3次請けまで)とするよう努める。 - 書面交付義務の対象拡大:
利用運送事業者に対しても、契約締結時の運賃、荷役料金、サーチャージ等の書面(電子含む)交付を義務化。 - 無許可業者(白トラ)への委託禁止:
荷主に対しても、委託先が適法な緑ナンバーかを確認する責任を課し、違反時のペナルティ(勧告・公表)を新設。
この法改正により、いわゆる「水屋」と呼ばれる、電話一本で手数料のみを中抜きし、実態のない多層構造を形成している事業者は市場から排除される傾向にある。特に「2次請け以内とする努力義務」は、荷主企業がコンプライアンスの観点から「3次請け以降の運送を認めない」という基準を設けるトリガーとなっており、運送会社は自社の取引構造を見直さざるを得ない状況にある。
契約内容の書面化については、運賃だけでなく、附帯業務(棚入れ、検品、横持ち等)の対価を明確に分離して記載することが求められている。2026年現在、国土交通省は「標準的な運送約款」の活用を強く推奨しており、これに基づかない曖昧な契約は「買いたたき」や「不当な付帯作業の押し付け」として下請法違反のリスクを招く。
さらに、事業許可のあり方についても重大な変更が加えられた。2026年4月から、貨物自動車運送事業の許可は「5年ごとの更新制」へと移行する。これまでは一度許可を取得すれば、重大な違反がない限り永久に営業が可能であったが、今後は5年ごとに法令遵守状況、社会保険への加入状況、財産的基礎などが審査される。管理規定が不十分なまま運用を続けている事業者は、更新時に許可を失うという極めて高いリスクを背負うことになる。
実運送体制管理簿の作成に関して、わからない点(あるいは未確認の点)としては、特殊車両や緊急輸送時における管理簿の記載項目の免除規定や、複数のデジタコデータを統合して管理簿を作成する際のデータの標準化基準が、2026年時点でも一部の地方運輸局で解釈が分かれているケースがあることだ。これらは今後、具体的なQ&Aとして公示されることが期待される。
【結論】
運送会社および利用運送事業者は、2026年4月の施行に向けて、配車システムと連動した「実運送体制管理簿」の自動生成機能を備え、下請構造が3次請けを超えないような協力会社管理規定を整備することが急務である。
【根拠】
2024年に成立し2026年4月に施行される「貨物自動車運送事業法」および関連省令。
【注意点・例外】
実運送体制管理簿そのものへの不備に対する直接的な「罰金」は現時点で規定されていないが、作成を怠ることは事業法33条に基づく「行政処分」の対象となるため、軽視は禁物である。
【出典】CloudSign 改正貨物自動車運送事業法の全体像 行政書士法人シグマ 2026年4月1日改正のポイント Hacobu 貨物自動車運送事業法の改正スケジュール
下請取引適正化法と「白トラ」リスクの完全排除
2026年1月、物流業界を震撼させているのが「改正下請法(通称:取適法)」の施行である。これまで運送委託の分野では、資本金基準により下請法の適用外となる取引が多かったが、改正により「従業員数」による基準が追加され、事実上ほぼ全ての荷主と運送会社、および運送会社同士の取引が規制の対象となった。
この改正法の下では、荷主や元請会社(委託事業者)は、受託会社(中小受託事業者)に対して以下の義務を負う。
表3:改正下請法(取適法)における委託事業者の義務と禁止事項
| 項目 | 具体的な内容 | 違反時のリスク |
| 書面交付義務 | 委託内容、代金、支払期日を明記した3条書面の発行 | 勧告、社名公表 |
|---|---|---|
| 支払期日の遵守 | 給付の受領から60日以内に代金を支払う | 遅延利息(年14.6%)の発生 |
| 現金決済の徹底 | 手形による支払いを原則禁止、振込手数料の転嫁禁止 | 立ち入り検査の対象 |
| 不当な行為の禁止 | 買いたたき、荷待ち・荷役作業の無償押し付け | 是正命令、罰則 |
運送委託が「特定運送委託」として定義されたことにより、現場での「慣行」は法的な「違反」へと昇格した。例えば、契約書にない荷役作業(積み込み、棚卸しなど)を「ついでにやっておいて」と口頭で指示することは、書面交付義務違反および不当な経済上の利益の提供要請に該当する可能性がある。
同時に、2026年4月から強化されるのが「違法な白トラ業者への委託」に対する荷主の処罰化である。これまでは許可を持たない白ナンバー車両が有償で運ぶこと(白トラ)は、運んだ側が主に処罰されてきた。しかし改正後は、白トラであることを知っていながら、あるいは適切な確認を怠って委託した荷主側も、国土交通大臣から是正のための「要請」や「勧告」を受け、社名が公表されることになる。
荷主企業や元請運送会社は、管理規定に「委託先の許可状況の確認プロセス」を明文化しなければならない。
- 新規取引開始時の許可証写しの取得
- 5年ごとの許可更新時期に合わせた再確認
- 現場における緑ナンバーの目視確認
これらを怠り、万が一委託先が事故を起こした際に無許可営業であった場合、委託者側の法的責任(監督責任)を回避することは極めて困難となる。
推測ですが、今後はAIを活用した「許可情報データベース」と配車システムの連動が進み、許可が切れている事業者の車両には自動的に発注が行われないような、デジタルによるガードレールの構築が標準化していくと考えられる。
専門家に確認を要する事項として、自社が下請法上の「委託事業者」に該当するかどうかの従業員数判定基準(役員やパート・アルバイトのカウント方法)や、グループ企業間での委託における特例の有無などが挙げられる。
【結論】
運送会社は、自らが「下請け」として守られる権利を知るだけでなく、「元請」として下請法を遵守し、かつ「委託者」として協力会社の適法性を確認する二重、三重の管理フローを確立する必要がある。
【根拠】
2026年1月施行の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(下請法改正)」および貨物自動車運送事業法改正案。
【注意点・例外】
親事業者が「301人以上」、下請事業者が「300人以下」という従業員数基準は、資本金が1,000万円以下の零細企業同士の取引であっても、この基準に該当すれば下請法が適用される点に注意が必要である。
【出典】マネーフォワード クラウド契約 2026年改正下請法の解説 行政書士法人シグマ 白トラ利用の処罰化
特定荷主制度とCLO(物流統括管理者)選任の衝撃
「物流2026年問題」の最大の山場とも言えるのが、2026年4月より施行される「改正物流効率化法」に基づく特定荷主制度の本格運用である。この法律は、運送事業者だけでなく、荷主企業に対しても物流効率化に向けた法的義務を課すことで、サプライチェーン全体の持続可能性を確保しようとするものである。
年間取扱貨物重量が9万トン以上の荷主は「特定荷主」に指定され、以下の義務が課される。
表4:特定荷主(特定事業者)に課される義務と罰則(2026年4月〜)
| 義務内容 | 具体的な実務 | 違反時の罰則 |
| 物流統括管理者(CLO)の選任 | 経営層(役員クラス)からの選任・届出 | 100万円以下の罰金 |
|---|---|---|
| 中長期計画の作成・提出 | 荷待ち短縮、積載効率向上等の目標設定 | 50万円以下の罰金 |
| 定期報告の実施 | 毎年、貨物重量や取組状況を報告 | 50万円以下の罰金 |
| 選任・解任の届出漏れ | 選任後の速やかな届出 | 20万円以下の過料 |
特に重要なのは「物流統括管理者(CLO)」の役割である。CLOは単なる現場の物流担当ではなく、販売、調達、生産、在庫管理の各部門を横断し、物流の観点から企業経営を最適化する権限を持つ役員クラスが想定されている。CLOには、荷主の都合による無理な配送指示を抑制し、運送事業者が改正改善基準告示を遵守できるような環境を整える責任がある。
特定荷主の指定範囲は広く、自社で運送契約を結ぶ「特定第一種荷主」だけでなく、契約はないが貨物を受け取る「特定第二種荷主(入荷側)」も対象となる。製造業の資材入荷、小売業のセンター入荷、建設現場での資材受け取りなどが含まれる。これは、納品先での荷待ち時間がドライバーの長時間労働の主因となっているため、受け取り側の責任を明確化したものである。
運送事業者にとって、この制度は追い風となる。荷主のCLOに対し、以下の事項を「法的義務の履行」として提案できるようになる。
- トラック予約受付システムの導入による荷待ち削減
- パレット標準化による荷役時間の短縮
- 帰り荷の確保や共同配送による積載効率の向上
- リードタイムの緩和や納品日の集約
(推測ですが)2026年後半からは、特定荷主が提出する「中長期計画」の進捗が芳しくない場合、国が是正を勧告・命令し、改善が見られない場合は企業名が公表されるなど、社会的信頼を揺るがすフェーズに入る。運送会社は、荷主の「物流効率化パートナー」としての地位を確立し、共に計画を策定する姿勢が求められる。
わからない点(未確認の点)としては、CLOの具体的な選任届出フォームの最終版や、多国籍企業における「日本国内の責任者」としてのCLOの定義などが、2026年の施行直前まで一部で議論が続いていることである。これらは経済産業省や国土交通省のポータルサイトで随時更新される最新情報を確認する必要がある。
【結論】
運送会社は、自社の管理規定の見直しと並行して、取引先である荷主が「特定荷主」に該当するかを確認し、荷主側のCLOに対し、自社のドライバーを守るための効率化措置を具体的に申し入れる体制を整えるべきである。
【根拠】
2024年成立、2025年および2026年施行の「流通業務総合効率化法(改正物流効率化法)」および経済産業省の基本方針。
【注意点・例外】
年間取扱量が9万トンに満たない荷主であっても、物流効率化のための努力義務は課されており、悪質な荷待ち発生が続く場合は、貨物自動車運送事業法に基づく「荷主勧告」の対象となる点は変わらない。
【出典】CloudSign 改正物流効率化法のポイント KANADEN 2026年問題とCLO選任義務 Hacobu 特定荷主に求められる変革
まとめ:事業継続を左右する管理規定の再構築
2026年1月27日現在、運送事業者が直面している法規制の荒波は、かつてない規模と深刻度を伴っている。本報告書で詳述した通り、行政処分の厳格化、改善基準告示の徹底、2026年事業法改正による管理簿の義務化、下請法の適用拡大、そして特定荷主制度の導入という、全てのベクトルが「法令遵守できない事業者は退場せざるを得ない」方向を指している。
運送会社が今すぐ着手すべき管理規定の見直し項目を、優先順位に従って整理する。
1.運行管理・点呼規定の再点検
点呼の未実施や虚偽記載は「即・車両停止」に直結する。アルコール検知器の使用徹底、デジタコデータとの照合、遠隔点呼システムの適正運用、そしてこれらを裏付ける日報の電子保存(改ざん不能な形式)を「例外なく」実施する規定を定めること。専門家に確認を仰ぎながら、IT機器の有効性を担保する必要がある。
2.労務管理・36協定の適正化
2024年基準を超えた運行はもはや許されない。年間960時間の上限を遵守するための残業管理、拘束13時間・休息9時間(努力目標11時間)を前提とした配車割の作成、週2回までの特例運用状況の台帳管理を規定化すること。休息期間が不足した際の「12時間休息特例」の自動発動ルールの策定も有効である。
3.下請・協力会社管理規定の策定
2026年4月より、自社が利用運送を行う場合は実運送体制管理簿の作成が義務となる。再委託を3次請けまでに留めるチェック機能、委託先の「緑ナンバー許可証」の定期的な有効性確認、および書面(電磁的記録)による運賃・附帯業務料の明示ルールをマニュアル化すること。
4.荷主交渉・契約規定の整備
特定荷主制度を好機と捉え、荷待ち時間の記録、待機料の請求、燃料サーチャージの改定、附帯業務の有償化を、改正法および下請法を根拠として交渉・規定化すること。荷主側のCLOに対し、共同配送や荷役効率化を「共創」する提案窓口を設けることが、長期的な事業安定に繋がる。
(推測ですが)今後の運送業界では、コンプライアンスは「コスト」ではなく「最強の営業力」へと変質する。法令を完璧に遵守し、ドライバーの安全と健康を守りながら効率的に運ぶ体制を証明できる会社こそが、特定荷主から選ばれ続け、5年ごとの許可更新を無事に通過し、生き残る権利を手にする。
最後に、法解釈の細部や各社の実態に応じた就業規則・管理規定の法的な文言作成については、必ず行政書士、社会保険労務士、弁護士等の専門家に確認を行い、リーガルチェックを経た上で正式な施行を行うことを強く推奨する。2026年の物流サバイバルを勝ち抜くための管理規定は、机上の空論ではなく、現場のドライバー一人ひとりが守れる「実効性」こそが生命線である。

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