中小事業者の物流DX後押し 斉藤鉄夫国交相 新春インタビュー

中小事業者の物流DX後押し 斉藤鉄夫国交相 新春インタビュー

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)、標準化の動きが進展する。国土交通省は昨年6月に閣議決定した総合物流施策大綱(2021年度〜25年度)のもと、物流効率化への支援策を拡充している。中小零細事業者が多くを占める中、いかにDX化を推進し持続可能な物流を実現するか。新年を迎えるにあたり、斉藤鉄夫国土交通大臣に物流、自動車分野の政策を聞いた。

——総合物流施策大綱に掲げられた物流分野のDX化について、特に資金力の乏しい中小企業がDXを進めるための方策は。
斉藤鉄夫国土交通相 昨今の人手不足や新型コロナウィルス感染症への対応の必要性に加え、カーボンニュートラルに向けて環境にやさしい物流を実現する観点からも、物流DXや一層の物流の効率化を図り、生産性の向上を目指す取り組みが求められる。一方、現状としては、特に中小事業者を中心に、電話やFAXでの受発注など、アナログな手法に頼っている事業者が多いのが実態である。また、中小事業者では、コスト負担などから、事前に明確なメリットが確認されない限り、デジタル化に躊躇することも想定される。
このため、国土交通省では、中小を含む物流事業者が物流DXに向けて実際に取り組んでいる事例や、その効果・課題を調査・整理し、中小事業者が物流DXに取り組む際の参考としていただけるよう、わかりやすく示して発信していくこととしている。
また、DXの観点で行う物流効率化の取り組みへの支援を行うとともに、資源エネルギー庁とも連携して、サプライチェーン全体の輸送効率化を図るために導入する自動化・省人化に資する機器・システムに対する補助を21度から行っており、22年度当初予算案でも引き続き必要な予算を計上している。
今後は、物流DXに向けた取り組みの着手・進捗状況等について、定期的にヒアリングや調査を行っていく予定だ。そうした結果も踏まえつつ、中小事業者における物流DXに向けた取り組みが少しずつでも進捗するよう、取り組みを検討・推進していく。
——月60時間超の時間外割増賃金率の50%への引き上げが中小企業に適用される期限が1年余に迫る。中小企業の多い自動車運送業に対する支援策については。
斉藤国交相 18年に議員立法により改正された貨物自動車運送法に基づき、20年4月に「標準的な運賃」を告示した。トラック運送業が法令を遵守して事業を行うとともに、ドライバーの労働条件改善や輸送の安全の確保といった安定的な物流を維持・確保するための参考となる指標で、必ずしも運賃交渉力が十分に備わっていないトラック運送業の適正な運賃収受を下支えするもの。
時間外割増賃金率の引き上げについても、「標準的な運賃」の人件費を含め「適正な運賃を収受する」という基本的な考え方に則り、自己の経営を分析して運賃に反映し荷主との交渉に臨んでいただきたい。
国土交通省では、適正な運賃収受の重要性について荷主等に理解いただけるよう、関係省庁・業界団体と連携し、リーフレット等の配布、セミナー等の様ざまな機会を通じて同制度の周知・浸透を図っていく。
——トラックの隊列走行を含む自動運転レベル4の25年度以降の商業化に向けた今後の取り組みは。
斉藤国交相 トラックの自動運転は、ドライバー不足や労働環境の改善など、物流業界が直面する課題の解決に資するものとして、期待されている。経済産業省と連携し、必要な技術の開発や実証実験を重ね、昨年2月、新東名高速道路において、後続車の運転席を無人とした状態での隊列走行を実現した。
今後は、次の政府目標である「2025年度以降のレベル4の自動運転トラックの実現」に向けて、高速道路において、急な割り込み等があっても運転を継続する、車線減少や分合流をスムーズに実施するといった対応が出来る車両技術の開発に取り組む。これらの取り組みを通じ、隊列走行を含む、トラックのレベル4の自動運転の早期実現を目指す。
——防災・減災への港湾の取り組みに関する見解は。
斉藤国交相 港湾は我が国の貿易量の99・6%を扱う重要な社会インフラであり、その背後地は人口や資産が集積する、国民生活、経済活動にとって極めて重要な地域。
人命防護、資産被害の最小化は当然として、災害発生時の復旧・復興拠点としての機能強化や基幹的海上交通ネットワークの維持によるサプライチェーンへの影響の最小化が必要だ。
このため、臨海部の安全性向上や基幹的海上交通ネットワークの維持の観点から、ハード対策として、耐震強化岸壁の整備や防波堤の補強等を「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」として強力に推進する。
また、ソフト対策として、ドローン等の活用により被災状況等を迅速かつ効率的に把握する体制を計画的に構築するとともに、港湾BCPに基づく訓練等に取り組む。引き続き、ハード・ソフト一体となった総合的な防災・減災対策に取り組む。

提供元:日本流通新聞×foredge

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