【物流日記】世界最大級の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」

【物流日記】世界最大級の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」

昨年10月に新型コロナウイルス禍からの経済回復で需要が高まり、原油価格や液化天然ガスの高騰のニュースを多く見かけたのではないでしょうか?
この数か月でガソリン価格も高騰し、レギュラーガソリンがリッター当たり170円前後で推移しています。
さらに値上がりするのではないかと危惧されましたが、政府はレギュラーガソリンの全国平均価格が1リットルあたり170円を超えた場合、最大で1リットルあたり5円分を補助するなど国民の生活に影響がでるほどです。

その他の政府の対策として、石油の国家備蓄の一部を放出する発表がありました。石油供給を一時的に増やし石油製品の価格高騰を抑えるのがねらいで、国内需要の2〜3日分に相当する420万バレル程度を22年3月末までに市場に出す方針です。
原油価格が落ち着けば、ガソリンのほか原材料や資材などの値下がりも期待されますが、その効果は不透明だそうです。

原油価格抑制のため政府も対策を講じていますが、燃料費や光熱費の押し上げは生産現場や物流網のコスト上昇に直結し、企業収益を圧迫します。
ガソリンだけではなく、鉄鋼製品や木材、小麦粉や大豆といった食料品にも値上がりが広がり、さらに石油由来のプラスチック製品や衣料品などにも価格転嫁される恐れも今後懸念があります。

物流業界も例外なく原油価格の高騰による燃料費の上昇により、トラック事業者の経営を直撃しています。
全日本トラック協会によると、軽油価格が1円上がると物流業界全体への影響額は年間で約167億円負担増になるそうです。
資源エネルギー庁が公表した石油製品価格調査の結果によると、22年2月9日時点の価格は151.0円/リットルであり、5週連続で値上がりし続けています。

このような状況下において日本のエネルギー供給の8割を化石燃料が占めており、そのほとんどを輸入に依存しています。
2018年の日本のエネルギー自給率は11.8%で、ほかのOECD諸国と比べると低水準となっています。2010年にはエネルギー自給率が20.3%あったのですが、2011年に起こった東日本大震災の影響で国内の原子力発電所が停止し、ふたたび火力発電が増加しています。
そのため2010年当時の化石燃料依存度は81.2%でしたが、現在の化石燃料への依存度は85.5%となっていますから、国内エネルギー自給率や環境問題への対策も考えざるを得ないのが現状です。

2015年には2020年以降の温暖化対策の新しい枠組みとしてパリ協定が成立したことで、明確な課題として浮彫になりました。
世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃より充分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを目的としています。
この目的のためパリ協定の下で国際社会は、今世紀後半に世界全体の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすること、つまり「脱炭素化」を目指しています。

原油価格の高騰は物流業界の経営を圧迫し、環境問題の側面からも脱炭素化にも向き合わなければいけない現状です。

そこで今回は再生可能エネルギーに注目しました!
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった、温室効果ガスを排出せず国内で生産することが可能となるため、資源に乏しい日本は、エネルギー自給率の改善にも寄与することができます。

その中でも水素は、CO2を利用段階では排出しないクリーンなエネルギーとして、注目される新エネルギーのひとつです。水素を再生可能エネルギーから製造することができれば、製造段階でもCO2を排出することなく、製造から利用までトータルな「CO2フリー」が実現できます。

そこで2018年から福島県浪江町で建設を進めてきた、再生可能エネルギーを利用した世界最大級となる10MWの水素製造装置を備えた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R))」は水素社会実現に向けて誕生した施設です。

FH2Rでは、18万㎡の敷地内に設置した20MWの太陽光発電の電力を用いて、世界最大級となる10MWの水素製造装置で水の電気分解を行い、毎時1,200N㎥の水素を製造し、貯蔵・供給します。

FH2Rでは再生可能エネルギーの導入拡大のために、再生可能エネルギーを活用した水の電気分解による水素製造とその輸送・貯蔵に関する技術開発、出力変動の大きい再生可能エネルギーを最大限活用するための電力系統の需給バランス調整機能(ディマンドリスポンス)を実現するための技術開発を行っています。

水素は電力を大量に長期で貯蔵することができ、長距離輸送が可能であるため製造した水素は、主に圧縮水素トレーラーやカードルを使って輸送し、福島県や東京都などの需要先へ供給する予定だそうです。

今回の新型コロナウイルスの流行をきっかけに日々の生活は様々な側面から影響を受けました。
化石燃料に依存しすぎては、エネルギー自給率が低い日本は有事の際に経済的影響を受けやすいかと思います。
環境問題の側面はもちろんのこと、FH2Rを筆頭に脱炭素化と安定的なエネルギーの供給を目指した取り組みの必要性への理解も深まりました。

世界最大級の水素社会を目指す施設になるので、今後も注目です!

今後も「物流たまてばこ」のコンテンツとして、物流業界の最新情報を発信していきますのでチェックしてみてくださいね!

日本流通新聞 トラックマンジョブ