【物流日記】15億頭の牛が地球温暖化を促進、国内最大級メタン排出要因

【物流日記】15億頭の牛が地球温暖化を促進、国内最大級メタン排出要因

技術の発展により我々の生活は豊になりましたが、その反面地球温暖化が促進され環境に対する課題を多く抱えていることは言うまででもありませんが、地球温暖化の原因として「牛のげっぷ」が挙げられることはご存じでしょうか?

CO2は地球温暖化の原因となる温室効果ガスの約76%を占めていますが、CO2に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きな温室効果ガスとして知られているのが、メタンガスです。
CO2と比較してさほど注目されないメタンガスですが、温室効果がCO2の約25倍とされていて、湿地や池、水田で枯れた植物が分解する際に発生します。
このメタンガスは「牛のげっぷ」にも含まれているのです。

たかが「げっぷ」と思われるかもしれませんが、乳牛1頭が放出するげっぷは1日に500リットルのメタンガスを排出すると言われています。
牛は反芻動物であり、4つの胃に存在する約8000種の微生物の力でエサを発酵・分解する過程でメタンガスが発生します。
メタンガス500リットルと言われてもピンときませんが、メタンの温室効果はCO2の25倍なので、日本国内におけるメタン排出量はCO2換算すると2848万トンにもなります。
牛のげっぷは日本国内で排出されるメタンガスの27%、国内の温室効果ガスの排出量の約0.6%を牛のげっぷが占めているといいます。
国内メタンガス排出量の約42%の割合を占めている稲作(水田)についで、牛のげっぷは国内最大級のメタンガス排出要因とされています。

げっぷは反芻動物にはつきものであるため、ヒツジやヤギからも出ますが、メタンガスの量は原則餌の量に比例するので、ヒツジやヤギから出るメタンは牛より少ないです。
牛やヒツジ、ヤギは世界で30億頭以上、飼育されています。
全世界の15億頭もの牛を含め、世界全体の温室効果ガスの4%がげっぷになるため、1995年に「げっぷは地球温暖化の要因」と指摘され、世界各国がげっぷ対策に取り組んでいます。

長年温室効果ガスで問題視されている牛ですが、農業においては排泄物から堆肥を作って農作物を育て、それがまた牛を含めた家畜の餌になるという有益な側面を持っています。
そこで農業・食品産業技術総合研究機構は、牛の個体差に注目し同じ量のエサを食べてもメタンが多い牛と、それほど多くない牛がいることをつきとめ、乳牛の乳量や乳成分などを月に1度測定し、そのデータを使って改良が進められています。
同様に飼育現場でメタンを測定しビッグデータを収集することができれば、遺伝子によるメタンの発生が少ない牛の特定などが可能になります。
低メタン牛をうみ出すための品種改良実現の第1歩として、測定機器の開発が進められています。

また胃の中の微生物や発酵状態をモニターすることができれば、エサの量や与える時間などの改善に役に立ちます。
微生物を制御することが可能になればメタンを減らすことができますし、胃の中をモニタリングできる装置があれば、どう制御すべきかの手がかりになります。
農研機構はカプセル型のモニタリング装置の実用化を目指し、げっぷからのメタンガス排出削減に取り組んでいます。

2020年10月に臨時国会で2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことが発表されました。
カーボンニュートラルとは、脱炭素の取り組みであり、地球温暖化の原因となっているCO2などの温室効果ガス排出量を削減するため、化石燃料からの脱却を目指す取り組みです。
企業においては製造に関わる電力を再生可能エネルギーでまかなうよう努め、大手自動車メーカーが電気自動車の開発に力を入れるなど、各業界でCO2排出量の削減に向けた取り組みが盛んになっています。

もちろん物流業界も例外ではなく、輸送時に車両から排出されるCO2の削減に積極的に取り組んでいます。
例えば、貨物輸送を環境負担の少ない鉄道や船舶へと転換する取り組みの「モーダルシフト」や、多数の荷主から同じ納品先に輸送する際に、1台のトラックで共同で輸送することで配送効率の向上を目指す「共同輸送」という輸送形態があります。

物流業界だけではなく、様々な業界で温室効果ガス削減の取り組みがなされています。
今回は「牛のげっぷ」に注目しましたが、もちろん地域や個人の意識も重要になりますので、力を合わせてカーボンニュートラルに向けて頑張りましょう!

今回は国内最大級メタン排出要因と題して、地球温暖化の要因をCO2ではない側面に注目しました。
今後も「物流たまてばこ」のコンテンツとして、物流業界に関わる最新情報や環境問題について発信していきますのでチェックしてみてくださいね!

日本流通新聞 トラックマンジョブ