制度活用、しっかり転嫁を
1-6月の上半期トラック倒産件数が3年連続で前年を上回った。人手不足関連倒産や燃料高騰などによる物価高倒産が増えている。雇用確保の問題やコスト高の長期化がとりわけ中小・零細企業の経営を強く圧迫する。
東京商工リサーチ(TSR)によると、上半期は人手不足関連倒産が前年より7件増の20件となり、物価高関連倒産は20件増の46件で全体の3割を占めた。トラック運送業の事業環境の厳しさを浮き彫りにした。
時間外労働の割増賃金率引き上げなど人件費は上昇傾向にある。人手不足はどの業界も共通し、業界・企業間の人材確保への動きはさらに激しさを増す。
軽油価格は7月10日時点で1年ぶりの153円台となり、8週連続の値上がり。物価高倒産は引き続き増勢が続くとみられる。
政府、国の施策でコスト上昇分を適正に運賃・料金に転嫁する動きは進むが、事業者の活用状況とそれ以上にコスト負担が大きく追いつかない。「体力の乏しい中小・零細企業は耐え切れず、事業継続を断念するケースが増加している」(TSR)のがトラックの実態だ。
中小企業庁が3月の価格交渉促進月間で行った調査でも、発注側との交渉は改善しているが、価格転嫁率は低位で、トラックがとくに低い水準にある状況が続いている。
こうした中で中企庁は全国47都道府県の「よろず支援拠点」に「価格転嫁サポート窓口」を設置した。下請中小企業が適切に価格交渉・転嫁できる環境を整備するもの。
価格転嫁ができた企業からは「原価を示した価格交渉が有効」で、そのためには「コスト増加分を定量的に把握し、原価を割り出して提示」との事例も報告されている。相談窓口ではこうした知識や原価計算手法の習得支援を通じて価格交渉・価格転嫁を後押しする。
トラックは「標準的な運賃」というツールがある。制度の延長も決まり、荷待ち・荷役費用に燃料高騰分なども含め、荷主から適正に転嫁できるよう年内にも見直すことが政府の政策パッケージに示されている。これらを監視強化する「トラックGメン」も設置される。
燃料高では元売りへの補助金が9月末で一旦終了する。一段のコスト対策が求められるが、トラックは一連の転嫁円滑化や今回のパッケージ施策をしっかり活用し、着実に荷主から転嫁できるよう徹底したい。それだけ改善の余地は大きい。