原価上昇分を確実に転嫁
全日本トラック協会の4-6月期「トラック運送業界の景況感」によると、運賃・料金の水準が改善し、全体の判断指数は1-3月期を上回った。今後は輸送数量、営業収入、営業損益が改善見込みで、7-9月期も指数は上向くと予想している。
4-6月期は輸送原価の上昇分の一部が価格転嫁されたことが指数に表れた。一般貨物、宅配、宅配以外の特積とも運賃・料金水準は1-3月期より改善し、指数がマイナス水準だった宅配、一般貨物はプラスに浮上。7-9月期も一般貨物、特積はさらに改善、宅配は下降予想もプラス指数を維持する。
足元は原油価格の再上昇が懸念されるが、トラック運送業界は適正運賃・料金収受への取り組みを業界一丸で進めている。前向きに価格交渉に動く流れを加速していく必要がある。
全ト協の景況感指数をみると上昇傾向も小幅にとどまる。「輸送数量」が「運賃・料金」よりも低い傾向が続く。輸送数量の指数は一般貨物、宅配がともに4-6月期は悪化し、7-9月期は改善もマイナス圏内。特積は改善傾向だが指数はマイナス50-60と低水準だ。
一方、上場物流企業の4-6月期決算では、前年同期に対し減収減益が目に付く。期初予想を下回り見通しの下方修正も相次いだ。1つは国際物流においてコロナ禍反動による物量減少と販売価格の下落があげられる。
国内においても「値上げによる消費者の購買減が想定以上に物量に影響」や、「消費行動のリアル回帰によるEC需要の伸び悩み」の影響を受けた。
宅配便の月次をみるとヤマト運輸は6カ月連続、SGホールディングスは10カ月連続で取扱個数の前年割れが続く。ヤマト運輸は宅配便3商品の通年予想を下方修正している。
大手決算の売上高要因分析からは「既存顧客物流」の減収が大きい。これを価格改定のほか、新規受注、受注領域の拡大でカバーできたところが堅調な推移をみせているようだ。
国内景気は半導体供給不足の緩和により自動車などの生産能力向上や、アフターコロナで人流が活発化し、対面サービスの回復などプラス材料もある。物流企業決算の見通しからは消費動向の影響も4-6月よりは改善との声も聞かれる。
それでも原油や為替動向と外部環境は不透明だ。国の施策も大きな後ろ盾に、原価上昇分を確実に転嫁していきたい。